![]() |
| 其の三 |
| 錘(おもり) |
今回は釣り好きの従業員Cの話です。
休日のある日、早朝より一人で船酔い止めのワンカップを買って御坊方面へイサキ釣りに行きました。乗合船で釣る場合、使用する仕掛けや錘の大きさは船頭が決めます。全員同じ条件です。
いざ、ポイントに着いて期待を胸に第1投を投じると、しばらくしてアタリらしきものが来たので「キターーー」と思いきや隣の客と“お祭り”です。“お祭り”とは仕掛け同士が絡み合うことを言います。「すんませんなあ」「いやご互い様やよ」もつれた仕掛けを解いて第2投。しばらくするとまた隣の同じ客と“祭り”です。「よう絡みますなあ」「そやなあ」今度もCが絡んだ仕掛けを解いて第3投。するとまた隣と“祭り”。「何でなあ。こんなことしてたら釣りにならんわ」不思議に思ったCは絡んだ仕掛けを解きながら、ふとあることに気付きました。隣の客は決められた錘より重いものを使っていたのです。
なぜ乗客全員が同じ錘を使うのかというと、海中には潮流があって仕掛けが流されていきます。同じ錘を使わないと仕掛け同士が平行にならず絡んでしまいます。潮流の上(カミ)と下(シモ)では下のほうが良く釣れます。他の乗客の撒き餌が下のほうに流れてくるからです。一番上で重い錘を使っていれば問題はなかったのですが、その客は常連らしく一番下に鎮座しており、その上にCがいたので“祭り”となってしまったのです。なぜ重い錘を使うのかというと潮の流れが速いときにアタリがよく分かるからです。
![]() |
| イサキ(スズキ目スズキ亜科イサキ科) |
原因が分かり腹の立ったCは「おっさん、みんなと違う重い錘を使こうてるやないか。そやさかい絡むんじゃ」そう言いながら船頭を見ると、顔をしかめて首を横に振っています。「言うな」と合図をしているのです。「常連もヘチマもあるか」と絡んだ仕掛けを解きながら隣の客の錘を「ブチッ」とハサミで切って「こんなもん」と海の中へ捨ててしまいました。「なっ、何すんのな兄やん」「何すんのじゃあるか。みんなと同じこの錘使え」とその客の足元に投げつけてやったそうな。船頭にも説得され、渋々その錘を使い始めた客は、重い錘を使うだけでヘタらしくさっぱり釣れません。Cはというと釣れるたびに「また釣れた。よう釣れるは今日は」とイヤミたっぷりにその客に聞こえるように言ってやったそうです。
それからちょくちょくその客とも同じ船に乗ることがあるらしいのですが、未だにお互いものも言わないそうです。
ゴルフと同様エチケット、マナーは基本の第一条件ですね!!